ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは先発医薬品の特許が切れたときに販売される医薬品であり、国が先発医薬品との同等性を保証したものです。先発医薬品と違い、新規化合物の探索費用がないため価格が低くなっています。今回は具体的にジェネリック医薬品と先発医薬品の違いと同等性の証明方法(経口固形製剤)を解説していきます。
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ジェネリック医薬品
ジェネリック医薬品が先発医薬品との同等性を示すためには、「溶出試験」と「生物学的同等性試験」が必要です。この二種類の試験で先発医薬品と同等性が認められた場合、ジェネリック医薬品として承認されます。
※同等性が認められないが上市したい場合は先発医薬品として申請し、承認されれば可能です。その場合は先発医薬品としてのプロセス(臨床試験など)が必要であり、コストの面で採算がとれません。
溶出試験
溶出試験は消化管内での薬物の溶出挙動を疑似的に再現したものです。溶出試験器に錠剤を入れ、パドルを回転させ、時間あたりの溶出量を算出し比較します。
先発医薬品の同等性を示すための溶出試験は複数のpHとパドル回転数で先発医薬品との同等性を検証します。医薬品の特性によって条件、同等性の保証基準が異なるため、詳しく知りたい方は下記のガイドラインを参照にしてください。この試験により、先発医薬品とジェネリック医薬品が同じ挙動で溶けるかの確認をおこないます。ジェネリック医薬品の目的は先発医薬品よりも早く溶かすことではなく、同じ溶出挙動を示すことです。しかし、この実験はあくまで試験管レベルの話であり、体内での挙動はより複雑でヒトが医薬品を服用した際の血中濃度も比較します。
生物学的同等性(BE)ガイドライン等 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
生物学的同等試験
実際にヒトが医薬品を服用して血中濃度を比較することで先発医薬品とジェネリック医薬品の比較をします。原則としてクロスオーバー法でおこないます。クロスオーバー法とは同じ人が先発医薬品、ジェネリック医薬品を順に服用し、薬物血中濃度を比較することです。被験者は健康成人志願者です。同等評価パラメータとしてAUC(血中濃度-時間曲線下面積)とCmax(最高血中濃度)を使用します。
よくある疑問
ジェネリック医薬品と先発医薬品の同等性は上記の2試験(溶出試験、生物学的同等性)で証明します。ここで、度々議論になる「ジェネリック医薬品は安全?」や「本当におなじものなの?」、「ジェネリック医薬品は効くの?」という意見です。一言で説明できないため、一つずつ解説します。
・ジェネリック医薬品は安全?
安全性については二つの試験(溶出試験・生物学的同等性試験)で先発医薬品との同等性を示していることから安全であると言えます。もちろん、原薬由来による問題が起こる可能性はあります。しかし、先発医薬品の原薬工場のみで起こることや一部の原薬工場のみで起こるなどジェネリック医薬品だけが起こるという訳ではありません。
・おなじもの?
おなじもの?という問いですが、完全におなじもの(同一)でありません。原薬の製造所や使用する添加剤は先発医薬品と完全に同じである必要はありません。同じ添加剤を使っていても処方(量)が異なる場合もあります。あくまで製剤化した状態での医薬品の溶出挙動という観点で同等性を保証しているだけです。付加価値をつける戦略として、先発医薬品よりも服用しやすくしたものもあります。先発医薬品と全く同じジェネリック医薬品としてAG(オーソライズドジェネリック)が発売される場合もあります。
・ジェネリック医薬品は効くの?
ジェネリック医薬品は有効性についての臨床試験は行っていません。しかし、生物学的同等試験で先発医薬品との比較をヒトの血中濃度でおこなっています。血中濃度での挙動が同等であるならば効果に違いが出ることはありません。すなわち、血中に先発医薬品と同じ濃度で取り入れられているならば、代謝される割合等は同じはずです。
このように直接、効果を証明しているわけではありませんが、先発品医薬品と同じ効果が得られることが示されていると考えられます。
まとめ
ジェネリック医薬品について解説しました。
ジェネリック医薬品のシェアは80%程度になりましたが、信頼を勝ち取っている訳ではないと考えています。しかし、「ジェネリック医薬品」という言葉に抵抗があるだけで、何が問題なのかを言える人は少ないのではないでしょうか。抵抗をなくすためにも同等性の担保には何がおこなわれているかをしっかり理解していくことが必要です。そのうえで、「先発医薬品を使いたい」や「ジェネリック医薬品を使う」の判断をしてください。
ジェネリック医薬品の業界研究をしている記事もあるので参考にしてください。
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